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───菊池誠、山本弘、長澤裕など、日本の「911陰謀論」批判者たちの言っていることは正しいか

『RikaTan』の記事③  「犯人の心理」を考えることが論理的であるとする山本弘の愚かさ


 当ブログ第3回目の記事は、これまでと同じように、『RikaTan』誌2016年12月号の記事「9.11 テロはアメリカ政府の自作自演?」(山本弘)について書く。今回はその結論部分、911が米政府の陰謀か否かを考える際に、陰謀者の心理を考えることが基本的・合理的・論理的であるとする山本弘の主張を検証しよう。

 結論から言えば、この主張は愚の骨頂だ。科学や論理の否定以外の何物でもない。


山本弘の主張


 記事から結論部分を引用しよう。少々長いので二つに分割する。

他にも陰謀論者の想定する「同時多発テロの真犯人」の行動は矛盾だらけである。旅客機をビルにぶつけるだけでいいはずなのに、なぜかわざわざ手間をかけて爆弾を仕掛けて解体する。ニューヨークを攻撃するだけでいいのに、なぜかペンタゴンも攻撃して大勢の軍人を殺傷する。なぜか旅客機ではなく巡航ミサイルをペンタゴンにぶつける。飛行機から電話はかけられないのに乗客からの電話を偽造する……。どれもこれも露見する危険性を高めるだけの無意味な行為である。(P67)


 こういった個別の問題については、いずれ別の記事で検証する。今回取り上げるのは続く結論部分だ。
 

 しかし、こういった基本的疑問をぶつけても、反応は薄い。それらが矛盾であることを、陰謀論者はどうしても理解できないらしい。
 彼らと何度も議論した経験から言わせてもらうなら、彼らの共通点は想像力の不足である。とりわけ「他人の立場になって考えてみる」という能力が決定的に欠けている。他人の心理が理解できないから、犯人の心理を完全にブラックボックス化し、合理的に解釈することを最初から拒絶しているのだ。
 彼らを論理で説得するのはまず不可能である。なぜなら彼らは、正しい論理を理解できないだけでなく、自分が論理を理解できないこと自体を理解できていないのだ。だから、「それは論理的にありえないでしょう?」といくら力説しても、馬耳東風なのである。


 911が米政府の陰謀か否かを考えるとき、犯人の立場になって考え、その心理を考えることが基本的・合理的・論理的である……のだそうだ。犯人の心理に基づき「それは論理的にありえないでしょう?」と言って良いのだそうだ。つまり、それをもって各種証拠や科学的検証を否定してよい、ということである。
 記事では、まず「代表的な陰謀説」9項目を挙げ、それを否定することで911の検証しているように見える。しかし人間の心理を基本としているのだから、そんなものはそもそも必要すらなく、書く順番が倒置されているだけである。
 これは曲解ではない。何度読んでもそう書いてあるし、記事の副題にも「陰謀論者は他人の立場で考えられない」とある。


望ましい考え方


 次に、望ましい考え方、正しい考え方をする人たちの言葉を引用しよう。

 これらの競合する理論(※アルカイダ犯行説と米政府共犯説)のどちらを受け入れるかは、どちらのほうが関連する事実によってより強く支持されているとわれわれが信じるかに依存する。あるいは少なくとも依存すべきである。

デヴィッド・レイ・グリフィン
『9・11事件は謀略か』P42


 これが正しい。考察の基本は事実であるべきだ。
 次に同書の序文、リチャード・フォーク(ブリンストン大学教授、専門は国際政治学など)による同書の評から。

 『9・11事件は謀略か』をそれほどまでに特別な本にしているのは、それが最も微妙で論争を巻き起こす領域――九月十一日の悲劇にかかわる政府高官たちの行動の広範な見取り図――をアカデミックな公平さの最良の精神で、最強の学究的美徳――どこであれ証拠と理性が導くところまで追究をすすめる意志――を示しながら探求されているということである。(P5)


 これが望ましい態度だ。結果がどこに行き着こうと、証拠に基づき考察を進めるべきである。

 そしてどんな科学的な行為でも、結局は仮説を証明する証拠を集めることだということにみんな同意するでしょう。そしてもしその証拠が仮説と矛盾するなら、それを捨てて別の仮説を探さなければなりません。

リン・マーギュリス
https://www.youtube.com/watch?v=I6jeg1i0WtE


 これはWTC崩壊の調査に関連して語ったものだが、これが正しい。これに同意できない人間がいるのだから、マーギュリス女史もさぞ驚かれるだろう。
 最後に、ネットの書き込みから。『さざなみ通信』というサイトへの「無党派通行人」氏の書き込みを2つ。いずれも最初の一文は山本弘と同じような考え方をしている別の人物の発言であり、それに対するレスである。

>4、自然で合理的な推測
 ビルやペンタゴンに、飛行機が突っ込んだばかりでなく、爆薬でも破壊されたのだとしたら、なぜそんなことをするのでしょう? 自作自演なら、WTCやペンダゴンに飛行機が突っ込むだけで十分でしょう。爆薬で爆破したら、自作自演の証拠を残すことになりますよね。―― このように推測するのも、これまた「ごく自然で合理的」なものです。


 実際の証拠を知らないあるいは検討していない段階での推測や予断と、実際に得られた証拠の取り扱い方が倒錯しています。
 まず、実際の証拠を知る前は、推測や予断の範囲外 (思いつきにくいこと) は仮説への制限となり得ますが、いったん何らかの証拠が得られたら、たとえ事前の推測や予断の範囲を逸脱するとしても、その証拠を無理なく説明するか、少なくとも矛盾しないように説を組立てなければなりません。
 さもなければ、その説は証拠に反する妄想あるいはトンデモ?になります。


>だいたい制御解体説をとるなら、いつ誰がどうやって誰にも気づかれずに大量の爆薬や導線をしかけたのか説明できなければなりませんし(米国政府は万能か!?)、なぜ主要な構造部分を爆破しさえすればよいものを、あえて爆薬のみならず、わざわざ支柱の耐火被覆をはがしてテルミット等を設置して溶かしたのかも説明できなければなりません(米国政府は労力をかけてる割にどこか抜けている!?)。ちょっと考えればいかに馬鹿馬鹿しい説明であるか、誰にでもわかるでしょう。


 何だか当初の先入観から1ミリも進歩していませんね。
 まず、やや抽象的になりますが、以前にも述べたようにWTCの崩壊現象は物理・化学的現象なので、その考察に先入観や周辺状況の解釈は何の影響も与えない一方で、考察によって確立された結果が逆に先入観を修正したり周辺状況 の解釈の仕方を制限することが一つ。


 全くその通りだ。証拠に基づいた考察により導かれた結論が、「犯人の心理」など周辺状況の解釈の仕方を制限するのである。


山本弘は実際に証拠を検証していない


 人間の心理を考察の基本に置くならば、証拠の検証など必要無くなってしまう。山本弘はそう書いているのだから、当然そうしているのだろう。実際、彼は911の疑問点の検証をほとんどしていないのだ。
 いずれ詳しく記事にするつもりだが、彼はスティーブン・ジョーンズの論文は読もうとしないし、グリフィンの本も読んでいない。記事の参考文献にもなっていない。また以前記事に書いたように、ツインタワーの崩壊について物理の知識の無いまま「常識」で判断してもいる(それらはもちろん、人間の心理を考慮した、彼にとっての正しい論理である)。
 ついには、講演でこんな発言すらしている。

 会場で菊池先生も言ってたけど、あれほど大きな事件だと、膨大な情報が飛び交っている。当然、間違った情報や、互いに矛盾する情報もある。でも、それらすべてを調べて論破するのは、ものすごく労力が要る。
 だからもうどこかで「やっぱり陰謀なんかないよね」と納得するしかないわけである。そうしないと無限に疑い続けなくちゃならなくなって、話が終わらないから。



結論


 たとえどのような結論が導かれようと、事実に基づき論理的に考察を進めるべきであり、その結果得られた結論が「犯人の心理」の理解の仕方を制限する。これが「犯人の心理」を考えるにあたっての正しい論理である。

 山本弘が「彼らと何度も議論した経験から言わせてもらうなら」と書くその相手の一人は僕(管理人)である。今回書いたようなことは、もう10年も前から繰り返し言っているのだ。だが彼はどうしても理解できないらしい。これは資質の問題だろう。

「自分が論理を理解できないこと自体を理解できていない」のは山本弘の方である。それゆえに、いくら証拠を突き付けても、例えばWTC崩壊の物理的な疑問を示しても、馬耳東風なのだ。無知と愚かさゆえに正しいことを言っている人間を馬鹿にしているのだから、もはや「馬鹿には見えない綺麗な服」を着ていると信じ町を練り歩いているも同じである。

テーマ : 911真相究明
ジャンル : 学問・文化・芸術

2017-10-16 : 『RikaTan』 : コメント : 13 :
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No title
 NZ大学の論文というのは知りませんが、ツインタワーの崩壊が科学的に証明されたということはないでしょう。ご存知のように、NISTが説明を放棄しています。また、自由落下速度で崩壊したWTC7もあります。

 爆発物の設置方法は分からないけれど爆破だ、それでいいと思いますよ。むしろ、それが分からなければ爆破と言ってはいけない、と言ったらおかしい。

 ビルの警備をやってたのがブッシュ弟の会社で、ジョン・オニールもビル崩壊の際に亡くなりました。

 怪しげな工事をやっていた、という証言は見たことがあります。まだyoutubeにあるんじゃないかな。
 参考に紹介すれば、確か『911ミステリーズ』という作品では、ビル全体の警備システムの大規模な工事の際に機会があった、という主張をしているそうです。僕は観てませんが。
2021-07-09 11:02 : デミ URL : 編集
山本弘は正しい
なにか言おうとおもったんですけどね、このコメント欄にすでに私がいいたことを書いてる人たちが大勢いますよね。私は当時NZ大学の建設エンジニアによるWTC崩壊の理論に関する論文を読み、あの崩壊は物理的に全く問題ない、つまり旅客機が突入して起きた火災の熱で筋骨が弱って内側に崩れ、パンケーキ風に崩れたという説は立証されると納得しました。

あなたがあのビルが制御解体で崩壊されたと信じているのであれば、それをするためにはどのくらいの爆薬が必要で、それをどう調達して、同運搬して、どのように設置したかをきちんと説明すべきです。そしてそれを誰にも気づかれずにビル内で仕事をしている人がいるなかでどうやるのかも説明すべきです。

そしてどうしてそんな大規模な仕事に関わった何百人という人が誰一人として何もいわないのか、例えばビルの警備員とか?

おかしいとおもうべきですよ。じゃあね。
2021-07-08 04:35 : 苺畑カカシ URL : 編集
mixi
 メシアさん、当サイトへようこそ!
 気付くの遅れて申し訳ありません。サイト放置気味でして…^^;

 山本弘さんとの議論は、mixi で読めます。以下の3つのコミュニティでなされました。

「懐疑論者の集い-反疑似科学同盟-」
「トンデモ・疑似・エセ科学(w)」
「それゆけ! 奇現象/超常現象」

 ここの911トピックや雑談トピックなど、あちこちに散らばっています。mixiは検索機能が低くで、なかなか読むのも難しいですが。
2019-12-18 06:07 : デミ URL : 編集
No title
 デミさんと山本さんの論争を読みたいのですが、どこに行けば読めるんですか?

 ちなみにたくやきむらさんという方の主張は、私は簡単に論破できます。
2019-11-12 20:30 : メシア URL : 編集
No title
 こんにちは、当サイトへようこそ。
 1・2・3で言っていること、よく分かります。
 数多ある911の疑惑のどこにスポットを当てるかは、興味や関心の問題なので、僕のものと違っていても気にしないで下さい。
 当サイトでは、「日本の911陰謀論の批判者たちの信頼性」ということをテーマとしてやっています。疑惑の追及は他の人に任せた形です。どうぞよろしくお願いします。
2017-11-05 02:00 : デミ URL : 編集
No title
911テロのウソを扱うのなら、素人の手に負えない技術的な問題が多くあるビル崩壊の件よりも、
1)飛行機の正面形をした、WTCへの旅客機の突入孔
2)旅客機が突入したと言うが、寸法は飛行機よりも遙かに小さいペンタゴンの壁面の孔
3)コンクリート壁からはみ出た翼部分がそのまま前方にすっ飛んでいく、戦闘機激突実験のビデオ
の3者を並べて、「この3者は物理的に共存できる物でしょうか?」と聞いて回る方が速い気がする。
2017-11-02 23:39 : 名無し88mm神信者 URL : 編集
Re: No title
 NISTの報告書では不足とする建築家はたくさんいます。AE911truht に3000人近い参加者がいることは、きっとご存知でしょう。また、当のNISTの元職員ですらダメ出ししています。
https://www.youtube.com/watch?v=R1FXE_Ihg-Y

 崩壊のメカニズムは「分からない」けれども、自重崩壊であるという結論だけは動かない、というのでは話になりません。
 残念ながら、木村拓也さんはブロックします。

 …おっと、そう書いていたら、新たに二つの書き込みが。これは削除します。
2017-10-21 22:53 : デミ URL : 編集
No title
> いえ、説明されていません。

その「丁寧に説明している」と称する根拠が磯部大吾郎の主張だけ?
そういうのが「結論ありき」でバカバカしいと指摘している。

そもそも、この磯部氏のスプリングバック仮説は本人がそう主張していただけで、その説は他の建築・設計の専門家や研究者から支持されていたわけでもない。
大学に籍を置いた教授職にあっても、注目を集めるために珍説・奇説を持ち出す御仁は少なくない。この人のこの説は、(自作自演陰謀論を支持するものではないけれども)トンデモ説であることには違いはないのではないか。

WTCのチューブ構造という工法から鑑みれば、衝突部より上層の階が崩落し始めれば、下層階の横梁がそれを支えきれるはずもなく(チューブ構造における横梁は、ラーメン構造での格子状に鉄骨が構築されたものと比較すれば脆弱であることは周知です)、連鎖的に崩落が続いていき(崩落が続くほどに下部構造を叩き壊していく落下物も増えていく)、横梁の支えが失われれば外部柱やコア柱も撓み接合部が破断して崩れていく、というプロセスを経るであろうことは高層ビルの構造や設計に精通した人であればみんな分かっていることです。
ただし、実際のWTC1,2の中で何がどうなっていたか、というのは厳密には確かめようもないし、シミュレートするにしても不確定要素が多すぎて意味がない。
そういう意味では「(詳細は、全崩壊してしまった後なので検証困難だから)分からない」とも言えるけれど、大枠としては『上層部の崩落を下層部が支えきれず連鎖的に崩壊が続く』ことに専門家は誰も異論を持っていない。それが現実ですよ。

そこを否定したいなら、「陰謀論を支持しない専門家でNISTやFEMAの最終報告書では情報不足だと批判している人」を挙げてくるべきでしょう。
本当に崩壊の機序を説明しきれていないのなら、そういう批判を述べる専門家は大勢いるはずです。
でも実際は、そんなことを言っている人はほとんどいない。
言っているのは「陰謀論信者」である人ばかり。

あの事件の検証結果に対してねじくれた解釈をしている、という現実にいい加減気付きましょうね。
2017-10-21 20:33 : Takuya Kimura URL : 編集
追記
 訂正。「長澤裕」ですね。あと、彼も「説明済み」と言っているのかも知れません。詳しくは忘れてしまいましたが、近く記事に書きます。
2017-10-21 14:47 : デミ URL : 編集
世界で唯一山本弘だけが
>手品のタネ(=ビル倒壊の機序)は説明されているのに、それを理解しようとせず、

 いえ、説明されていません。「説明済み」と言っているのは山本弘だけです。前回の記事で詳しく解説してありますが。

 菊池誠も長澤寛も、「解決済み」なんて言ってはいませんよ。そのあたりは、次回と次々回の記事で書こうと思っています。
2017-10-21 01:26 : デミ URL : 編集
No title
>それは「手品のタネが分からなければ、ハンカチが鳩に変わることを事実と認めるべきだ」というような主張だと思います。

それはむしろ陰謀論信者が言っていることでしょう。
手品のタネ(=ビル倒壊の機序)は説明されているのに、それを理解しようとせず、ごく些末な「説明の不足」を針小棒大に採り上げて『ハンカチが鳩に変わったんだ』(=9.11は自作自演の内部犯行だ)と言い張っていることこそ、貴方の言い分に当てはまります。
2017-10-21 00:21 : Takuya Kimura URL : 編集
手品の例え話
 それは「手品のタネが分からなければ、ハンカチが鳩に変わることを事実と認めるべきだ」というような主張だと思います。

 そのあたりもmixiでずいぶん議論をしました。山本さんの答えは、WTC崩壊要因は解決済みあるいは制御解体説は否定され済みであるから、例えとして不適切、というものだったと記憶しています。

 いずれそれも記事にする予定ですが、更新は月二回を目標にやっていますので、だいぶ先になります。
2017-10-20 15:11 : デミ URL : 編集
No title
ならば、ビル内に出勤していた誰にも察知されずに制御解体用の爆薬を仕掛けた手順をも理路整然と説明できるような「仮説」を提示しないと。
それすらできないんなら、つまるところ「それが事実としてあり得る可能性」すら立証できないことになる。

「手順は想定困難だけど陰謀があったんだ」と結論ありきで決め付けるのはナンセンス以外の何物でもない。
2017-10-19 21:42 : Takuya Kimura URL : 編集
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デミ

著者:デミ

 これまで主にmixiで911の議論をしてきましたが、この度ブログを開設しました。よろしくお願いします。

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